防水工事の基礎
【保存版】ベランダ・バルコニー防水工事の基礎知識
ベランダの防水工事は「FRP」や「トップコート」など専門的な建築用語で説明されることが多く、業者によって提案内容やメンテナンス方法が異なりやすいリフォームです。
A社が「部分補修」を提案してきたと思えば、B社は「全面補修」を提案するなど、家主にとって「どっちを信じれば良いの?」と疑問に感じることも少なくはありません。
そこで、この記事ではこれからベランダ防水リフォームを検討されている方を対象に、ベランダの劣化症状や防水工事の施工方法など、ベランダ防水工事を成功させる為に知っておくべき基礎知識について具体的に説明します。
1. ベランダ・バルコニー防水工事の種類
まず、始めにベランダ防水工事の種類について解説します。基本的に戸建て住宅のベランダ防水工事はウレタン防水、FRP防水の2種類になります。
この3種類のベランダ防水の種類を知っておくことで、あなたの家のベランダに最適なメンテナンス方法が分かるようになるので、まずはベランダ防水の種類について詳しく解説します。
1-2. ウレタン防水
ウレタン防水はウレタン樹脂塗料によりゴム状の防水膜を作る防水方法です。
ウレタン樹脂は低反発マットレスなどにも利用されていることから分かるように、柔らかい皮膜を形成するのが特徴です。
ウレタン防水は液体状の材料を使って、現場で仕上げる工法なので、複雑な形状をした場所でも、継ぎ目のない防水膜を形成できます。
【メリット】
- FRP防水に比べ、コストが安い。
- 防水層が軽量なので、建築物にかかる負担が少ない。
- 複雑な形状の部位へも使用可能。
- 継ぎ目のない均一な仕上がり。
【デメリット】
- 各工程で乾燥期間が必要なため、工期が長めになる。
- 均一な塗膜が難しい。
- 定期的に※トップコートをする必要がある。
1-2. FRP防水
FRPとは繊維強化プラスティック(Fiber Reinforceed Plastics)の略称で他のプラスティック系の材料の中で対衝撃性に優れており、耐水性や加工性に優れていることから、自動車のバンパーやヘルメットなどに使用されている素材です。そのFRPを防水工事に応用したのがFRP防水です。
FRP防水の特徴は防水用のポリエステル樹脂と防水用ガラスマットで作られた防水層を形成することから他の素材比べものにならないほど、高硬度で、対衝撃性、磨耗性に優れた仕上がりになります。
しかし、”動き”に対する対応性に脆く地震などによる下地の動きに追従できずに割れてしまうことがあります。
【メリット】
- 強度、軽さ、耐水性、耐熱性、耐久性に優れている。
- 均一な厚みで施工が可能。
- 速乾性なので工期が短くて済む。
- トップコートのバリエーションが豊富。
【デメリット】
- コストが高い。
- 臭いが出る。
- 湿気や化学反応で硬化するため、外気温に左右される部分が大きい。
2. ベランダ・バルコニーの劣化症状
次に、ベランダの劣化症状について説明します。
施主が正しく劣化症状を把握することで、適正な修理方法が分かります。そして、ベランダ防水工事のだいたいの必要費用が分かるのです。
リフォーム業者に「防水工事が必要」と言われ、ベランダの防水工事を考えるようになった方もいらっしゃると思います。
思いますが、リフォーム会社によっては”営業トーク”として言っているだけかもしれないので、まずは施主がベランダの劣化症状を把握して適正工事を理解しておく必要があるのです。
それでは、具体的にベランダの劣化症状を確認してみましょう。
2-1. ひび割れ
モルタルやコンクリートのベランダでよく見られる劣化現象です。
モルタルやコンクリートの”ひび”は大抵V時型に入り、表層ほど広がっているのが一般的です。そのため、ひび割れの幅が広ければそれだけ深くまで割れていると想像できます。
補修の目安としてはひび割れの幅が0.3mm以上あると補修が必要と専門家は判断します。
ヘアークラック(髪の毛程度のひび割れ)のような場合はそれほど心配する必要はありません。
2-2. 膨れ・剥がれ
経年劣化によるトップコートの剥がれ
新築から3年でベランダの塗装がバリバリに剥がれてきたというご相談をお客様から頂きますが、FRP防水のベランダやバルコニーに多い劣化症状です。
現在では新築住宅のベランダの大半がFRP防水が施されています。このFRP防水のトップコートには高硬化かつ磨耗性に優れたポリエステル系のトップコートが塗られています。
この高硬化かつ磨耗性に優れたポリエステル系のトップコートですが、紫外線や経年劣化の影響で次第にパリパリになってしまいます。
例えば、長年屋外に放置されたゴムホースをイメージするとわかりやすいと思いますが、年数が経ったゴムホースの表面は硬くなりヒビが入りますよね。これと同じように、ポリエステル系のトップコートも経年劣化で伸縮性が無くなり、パリパリと剥がれるようになります。
施工不良によるトップコートの剥がれ
FRP防水後、1年もしないでトップコートが剥がれてしまった場合は施工不良が疑われます。
FRPはポリエステル樹脂をガラス繊維で補強した、強化プラスチックですが、FRPの原材料であるポリエステル樹脂は空気に触れている部分が硬化しにくいという特徴があります。
その為に、防水工事で使用されるポリエステル樹脂の液体には、パラフィンと呼ばれる、ロウの成分が混合されています。
防水工事でポリエステル樹脂を流し込んだ際に、水と油の関係のようにパラフィンが上に浮いてくることで空気を遮断し、FRPの硬化を促進させる働きがあるのです。
そして、FRPが硬化後トップコートを塗る訳ですが、トップコートを塗る前に、このパラフィンを研磨溶剤でキレイに拭き取り除去をします。
パラフィン(ロウ)の拭き取り除去をしない防水工事はロウソクのカスの上にトップコートを塗るようなもので、早期の剥がれの原因につながります。
毛細現象による防水層の剥がれ・膨れ
防水層ごとめくれあがってしまう劣化症状として水の毛細現象が原因です。
「毛細現象ってナンダ?」と疑問に感じる方もいらっしゃると思いますが、簡単に言うと、ひび割れなどの小さな隙間から水が侵入して、防水層の内側に入り込んでしまう現象です。
厳密には”水”ではなく”水蒸気”ですが、防水層ごと剥がれてしまっている場合、ひび割れよりも下地から水が侵入しているケースが多く、塗膜の内側から水蒸気が発生して、塗膜を膨れ上がらせてしまいます。
これはヤケドした時にできる”水ぶくれ”をイメージしてもらうと分かりやすいと思いますが、ベランダの”塗膜の膨れ”も塗膜と下地の間に水が溜まってしまうことで、塗膜が膨れ、最終的には防水層ごと剥がれてしまいます。
2-3. 水たまり
ベランダに水たまりができる原因は2つです。”勾配不足”か”ドレンや排水溝の詰まり”が原因です。
そもそも、ベランダ・バルコニーは水を排水する為に、排水溝へ向かって緩やかな勾配があります。しかし、雨水が適切に排水されずに水たまりができてしまう場合は、防水というよりも設計上の問題があるかもしれません。
また、水たまりができてしまう原因として、落ち葉などでドレンや排水溝が詰まってしまい水をせき止めてしまっているケースもあります。
ドレンが内部で詰まってしまっていた場合トイレのつまりを解消するラバーカップで詰まりがとれることがあります。
2-4. 雨漏り
ドレンが内部で漏水していた場合や、ひび割れが原因で漏水してしまって場合、ベランダの底に雨染みが見られるとこがあります。
この雨染みはこれまで見てきたひび割れや剥がれなどの劣化症状が雨漏りに発展しているサインなので早急に補修工事をする必要があります。
3. ベランダ・バルコニー防水工事の相場価格帯
3万円〜28万円の価格帯が全体の80%以上を占めていることから、ベランダ・バルコニー防水工事の価格相場は約3万円〜28万円ほどになります。
その中でも、3〜7万円が部分補修、7〜21万円がトップコートの塗り替え、21万円〜28万円がベランダ全体の防水工事の費用相場といえます。
4. ベランダ・バルコニー防水工事の施工単価
防水の種類 | 耐用年数 | 価格 |
ウレタン防水 | 10〜15年 | 4,500円〜7,000円 |
FRP防水 | 10〜15年 | 5,000円〜7,000円 |
5. ベランダ・バルコニー防水の工事工程
続いて、ベランダ・バルコニー防水工事の施工工程についてお伝えします。
ここだけの話、ベランダ・バルコニー防水工事は業者にとって施工単価が安く、その割に手間がかかる為に、施工価格を高騰させる為に不誠実な提案をしてくる悪徳業者も存在します。
「不誠実な悪徳業者?」と疑問に感じる方もいらっしゃると思いますが、例えば表面のトップコートを塗り替えるだけで十分な工事なのにもかかわらず、主剤を流し込む工事(防水層)を提案してくる業者も少なからず存在します。
そのような、不誠実な業者に騙されない為にも、「どのような工事がされるのか?」ということを施主が知っておくことで適正な防水工事を行える知識が身につきます。
それでは、具体的にベランダ・バルコニー工事の工程について解説します。
5-1 トップコート塗り替え
トップコートが剥がれていても、防水層が劣化していなかった場合、トップコートの塗り替えで対応することができます。
【工程1】 高圧洗浄・下地調整
まず始めに、高圧洗浄でベランダ・バルコニーついた汚れやカビをキレイに洗い流します。
【工程2】 溶剤拭き取り
アセトン拭きで表面のワックス成分をき取ります。このワックス成分を拭き取らないと塗料が剥がれてしまう原因になるので防水工事の中でも特に重要な工程となります。
【補足】アセトン拭きとは?
アセトンとは防水工事で使用される油分を分解する溶剤です。身近なところで言えばマニュキアの除光液などで使われており、独特のシンナーのような臭いがする液体です。そのマニキュアの除光液で使用されているアセトンで油分をふき取ることで、下地を整える作業が防水工事ではアセトン拭きと呼ばれています。
【工程3】 プライマー塗布(下塗り)
アセトン拭きで表面のワックス成分を取り除いたら、次にプライマーと塗布します。プライマーと聞くと難しく感じてしまうかもしれませんが、プライマーは防水層とトップコートの吸着力を促進させる接着材の役割を果たします。
【工程4】 トップコート塗布(上塗り2回)
プライマーを塗り終わったらいよいよトップコートを塗っていきます。
トップコートは基本的に2回の重ね塗りが行われます。
最後に、塗りムラ、塗り残しのチェックを行い工事完了です。
5-2. ウレタン防水工事の工程
基本的にベランダのウレタン防水工事は密着工法による防水工事が一般的です。密着工法とはウレタン防水工事で最もスタンダードな工法でベランダなどの小規模なウレタン防水工事で採用されています。
一方で、ベランダよりも広い面積のバルコニーでは通気緩衝工法(脱気工法)による施工が行われることがあります。20平米を超えるバルコニーで使われることが多く、下地の上に通気シートを敷き詰めて、その上にウレタン塗料を塗る工法になります。
通気緩衝撃工法はシート防水に似ている為に勘違いされる方も少なくありませんが、下地の上に通気シートを敷き詰め、その上にウレタン塗料を塗る為に、下地を緩衝しながら支える為に、ひび割れが起こりにくいのが特長です。
また、通気緩衝工法はシートの下に水や湿気がたまらないようにする為に、脱気筒というステンレス製の筒が取り付けられるのが特長です。
脱気筒の設置目安として、20〜100m2につき1個設置します。ベランダやバルコニーでは1個設置することになります。この脱気筒があることで、湿気を逃がすことから”膨れ”、”剥がれ”が起きづらいのが特長です。
【工程1】 高圧洗浄
まずはじめに下地を高圧洗浄キレイに洗い流します。
【工程2】 下地調整
下地がコンクリートやモルタルの場合、伸縮目地(既存のコーキング)を撤去し、ひび割れを補修します。
【工程3】 プライマー(下塗り)
下地の処理が終わったら次に、プライマーを塗っていきます。このプライマーは主剤(塗料)の付き促進させる為に塗られます。
【工程4】 通気シート貼り付け(ウレタン防通気緩衝工法のみ)
通気緩衝シートを敷き詰めるように貼っていきます。そしてシートが重なっている部分をテープで止めて、脱気筒を設置します。
【工程5】 主剤を流し込む (2回)
【工程6】 トップコート塗布
5-3. FRP防水工事の工程
【工程1】 下地調整・高圧洗浄
既存の防水層をサンダーやサンドペーパーなどで削り全て撤去します。この際に釘の浮きなど施工不良につながりそうな箇所を削り取り、下地を調整します。
【工程2】 プライマー
既存の防水層を撤去したら次にプライマーを塗布します。プライマーの役割は防水剤がしっかりベランダの下地に密着させるための接着剤のような役割があります。
【工程3】 ガラスマット貼り付け
プライマーを全体に塗ったらいよいよ防水面(FRP)を貼り付けます。ガラス繊維を防水面に敷きながらポリエステル樹脂を浸透させます。これがFRPの防水層を形成します。
【工程4】 トップコート塗布(上塗り2回)
脱泡作業を行いしっかりと防水層を形成したら、トップコートを塗布します。FRP防水のトップコートで使用される塗料はアクリル系か、ウレタン系のトップコートが使用されます。
【まとめ】 適正業者で適正工事を行うことが重要!
いかがでしたでしょうか?ベランダ・バルコニー防水工事についてご理解いただけたかと思います。
ベランダ・バルコニーの防水工事は劣化症状によって施工方法が異なり、業者によっても提案が分れる工事となります。
もしかしたら、この記事を読まれている方の中にも「施工業者によって言ってることが違う・・・」、「どの業者の提案を信じれば良いの?」と疑問に感じる方も多いと思いますが、1社、2社ではなく必ず3社以上から相見積もりを取ることが、特にベランダ防水工事には必要です。
トラブルなく防水工事を成功させるなら
防水工事は、修繕規模によっては何百万円もの費用がかかります。
だからこそ、依頼をする業者は慎重に選ぶべきです。
防水マイスターでは、資格保有のアドバイザーが お客様に合った業者選びのお手伝いをさせていただきます!