防水工事の基礎
トップコート | 防水工事のトップコート塗り替えの基礎知識
昨日降り続いた雨がやんだので、溜まった洗濯物を干そうとベランダに出てみたら、一部乾いていない箇所を発見。
のぞき込んでみると、塗料がはげていて染みこんだ雨水が乾いていなかった。
「まだこのまま放置しておいても平気かな?」
「ここだけ塗装すればいいかな?」
そんな疑問やお悩みはトップコートの塗り替えという方法で解決できるかもしれません。
この記事の9項目を読めば防水工事におけるトップコートの役割と、トップコート塗り替えで対処できる劣化症状がわかります。
実際にトップコートの塗り替えを実施した例を交えて説明していきたいと思います。
1. トップコートとは
防水工事のトップコート塗装とは、防水層を守るために塗装をするという事です。
「防水層のコーティング塗料」と考えるとイメージしやすいかと思います。
トップコートのざっくりとした説明をしましたが、なんだかモヤッとしませんか。
なぜかというと「防水工事とは壁なり屋根なりを塗装すること」と認識していたのに、防水層を塗装するという不思議なフレーズが出てきたからではないでしょうか。
実際に家の防水で重要な働きをしているのは、防水層と呼ばれるものです。
防水層とは何かを簡単に説明すると、雨水の建物内部への浸入を防ぐために作られた層の事です。
防水工事とは防水層を形成することなのです。
防水を施す場所は、屋根やベランダなど外気にされされる箇所がメインとなります。
直接外気に触れる部分は、紫外線や風雨の影響によりダメージを受けていきます。
ダメージを受け続ければ、防水層の劣化が進み防水の機能が失われていき、雨漏りや建物内部の腐敗に繋がっていってしまいます。そこで防水層にトップコートを塗り、防水層を保護しダメージ軽減させるのです。
トップコートは保護の役割であり、防水性能はありません。
2. ウレタン防水のトップコート
ウレタン防水とは、液状にしたウレタン樹脂を数回に分けて塗り、塗膜防水層を形成していきます。
塗装で層を形成していくため複雑な形の場所にも対処でき、継ぎ目の無い仕上がりになるため雨水の浸入経路を抑える事ができます。
どの施工箇所にも幅広く対応できる防水方法とされています。
施工例も多く施工できる業者が多いため、費用を抑えて工事することができます。
耐久年数はそれほど長くはありませんが定期的にトップコートを塗り直すことで耐久性のもちを良くすることが可能です。
2-1 ウレタン防水のトップコートの種類
① アクリルウレタン系
標準的に広く使用されているトップコートになります。
② フッ素系
アクリルウレタン系のトップコートと比較すると、耐久性に優れています。高額なため、まだ一般的に使用されていません。
2-2. ウレタン防水のトップコートの主要メーカー
メーカー | アクリルウレタン | フッ素 |
日本特殊塗料株式会社 | プルーンフロンGRトップ | プルーンフロンGRトップフッ素 |
株式会社ダイフレックス | エクセルトップ | フッ素スーパートップ |
東日本塗料株式会社 | 弾性トップ14 | |
竹林科学工業株式会社 | タケシール#3000トップコート | |
大同塗料株式会社 | 水系ソフトトップコート AU遮熱型 |
2-3. ウレタン防水のトップコートの耐用年数
ウレタン防水層は非常に紫外線に弱いです。
そのため3~5年ごとに防水層の保護を目的としたトップコートの再塗装が必要です。
なお、フッ素トップは高性能のため耐用年数が10年もつ場合があります。
定期的にメンテナンスを行う条件で、ウレタン防水層自体の耐用年数は10年程度が目安となります。
3. FRP防水のトップコート
FRP防水とは、特殊ポリエステル樹脂とガラス繊維を編んで作ったシートを組み合わせて防水層を形成していきます。
ガラス繊維のシートを敷いた上からポリエステル樹脂を塗装して仕上げていくため、継ぎ目の無い仕上がりになり、優れた防水性を発揮します。
主に、ベランダやバルコニーで採用される防水方法になります。
FRPは繊維強化プラスチック(Fiberglass Reinforced Plastics)の略です。
プラスチック材のため、紫外線を浴び続けるともろくなっていきます。
そのため、定期的にトップコートを塗り直していく必要があります。
3-1. FRP防水のトップコートの種類
① ポリエステル系
主に新築の家に使用されているトップコートです。
FRP防水層の性能を生かせるトップコートですが、乾いた状態では硬くなるため割れやすいです。重ね塗りに向いていないため、再塗装で選ばれることはほとんどないでしょう。
② アクリルウレタン系
FRP防水のリフォーム工事で一般的に使用されるトップコートです。
ポリエステル系のトップコートと比較すると、硬さが無いためFRP防水層の特徴である耐摩耗性を生かすことができませんが、塗り直しに向いています。
3-2. FRP防水のトップコートの主要メーカー
メーカー | トップコート(アクリルウレタン系) |
日本特殊塗料株式会社 | タフシール |
東日本塗料株式会社 | スーパートップ遮熱 |
双和科学産業株式会社 | 石目調水性ナチュレコート |
トーヨー防水工業会 | トーヨーケミルーフ |
3-3. FRP防水のトップコートの耐用年数
5年程度の間隔で防水層の保護を目的としたトップコートの再塗装が必要です。
定期的にメンテナンスを行えば、FRP防水層自体の耐用年数は10~12年程度が目安となります。
4. シート防水のトップコート
シート防水とは、合成ゴムや塩ビ(塩化ビニル樹脂というプラスチックの一種)をシート状に加工したものを下地に接着剤で留める防水方法です。
シートは伸縮性があるため、地震の多い日本に適していて陸屋根や屋上に適している防水方法です。
シート同士を隙間無く繋いでいく技や、複雑な形状の場所はシートを切って加工しなければならないため、高度な技術力が必要になります。
4-1. シート防水のトップコートの種類
合成ゴムに影響を与えない水性タイプのトップコートを使用します。
4-2. シート防水のトップコート
メーカー | トップコート(アクリルウレタン系) |
日本特殊塗料株式会社 | タフシール |
東日本塗料株式会社 | スーパートップ遮熱 |
双和科学産業株式会社 | 石目調水性ナチュレコート |
トーヨー防水工業会 | トーヨーケミルーフ |
4-3. シート防水のトップコートの耐用年数
5年程度の間隔で防水層の保護を目的としたトップコートの再塗装が必要です。
定期的にメンテナンスを行えば、FRP防水層自体の耐用年数は10~12年程度が目安となります。
5. アスファルト防水
アスファルト防水とは、液状に溶かしたアスファルトとシート状にしたアスファルトを積み重ねて形成していく防水層の事です。
アスファルトを積み重ねるためとても重くなります。
そのため、この防水方法は公共施設やマンションなどの大型の物件に使用されることが多く、一般の戸建てで採用されることはほとんど無いでしょう。
ですが、防水方法としては最も長い歴史があり、耐久面や防水機能は高いのが特徴です。
5-1. アスファルト防水のトップコートの種類
メーカー | トップコート |
東日本塗料株式会社 | シートトップ#100 #200 |
日本特殊塗料株式会社 | ノンリークコート |
スズカファイン | HPトップ |
5-2. アスファルト防水のトップコートの耐用年数
5年程度の間隔で防水層の保護を目的としたトップコートの再塗装が必要です。
定期的にメンテナンスを行えば、アスファルト防水層自体の耐用年数は17~20年程度が目安となります。
6. トップコートの劣化症状
6-1. チョーキング現象
防水面を指で撫でたときに指の先が白くなったらチョーキングが進んでいるサインです。
白い粉の正体は、古くなった塗膜(塗料の膜)が粉状になったものです。
劣化症状の初期段階です。色が褪せてきて光沢が無くなってきたら触って確かめてみましょう。
6-2. はがれ、浮き
トップコートは年数が経つと防水層との接着力が弱まり次第に剥がれてきたり、浮いてきたりします。
またすでに水が内部に侵入しているために起こるケースもあります。
6-3. カビ、苔、雑草
北側などのあまり日光が当たらない場所や、雨水が溜まってしまう場所などはカビや苔の繁殖に最適です。
雑草などは、防水層まで根を張っている場合があり、そこから浸水する恐れもあるので、むやみに抜かずに業者に相談しましょう。
6-4. 摩耗
ベランダやバルコニーなど人が歩くところは、トップコートがすり減ってはげてしまい、防水層が見えてしまう事があります。
7. トップコート塗り替えの施工事例
【事例1】 ベランダ防水
どのような劣化症状で、どのようにトップコートを塗り替えたのか?
ベランダの床のところどころに塗装の剥がれが目立つようになってきた。
① 研磨
塗膜が剥がれている箇所を研磨していきます。
② 溶剤拭き
研磨して出た粉塵や油分などを除去するためアセトンという溶剤を使って拭き取っていきます。
③ 下塗り
プライマーを塗っていきます。
プライマーとは最初に塗る塗料の事を言います。ここではFRP防水層とこれから塗っていくトップコートをしっかりとくっつける接着剤的な役割を果たします。
④ 上塗り
FRP防水層を守るためにトップコートを塗っていきます。
ベランダ防水のトップコート塗り替えの注意点
トップコート塗り替えでは対応できない劣化症状
FRP防水施工は、下地となる合板にプライマー、防水用樹脂を順に塗り、ガラスマットを敷き詰め、防水用樹脂、トップコートを塗装し形成していきます。
一番上のトップコートのみに劣化症状が現れた場合は、トップコートの塗り替えで対処できますが、その下の層まで劣化症状が進んでいるとトップコート塗り替えだけでは不十分となります。
防水層の主な劣化症状とは、ひび割れや亀裂、また、合板の浮きなどです。
このような場合はFRP防水層を新しい物に替えるか、下地から替えるという防水工事になります。
【事例2】 陸屋根
どのような劣化症状で、どのようにトップコートを塗り替えたのか?
床全体が白っぽく見え、チョーキングが気になってきた。
① 洗浄
高圧洗浄機や手作業でチョーキングや汚れを取り除いていきます。
② 下塗り
塗り替え用プライマーを塗ります。
③ 上塗り
トップコートで仕上げます。
7-1. 陸屋根防水のトップコート塗り替えの注意点
トップコート塗り替えでは対応できない劣化症状
ウレタン防水施工は、コンクリート等の下地にプライマー、ウレタン樹脂の順に塗り、トップコート塗装で形成していきます。
ウレタン防水層の主な劣化症状とは、ひび割れや亀裂、塗膜の剥がれなどです。
このような場合はトップコートの塗り替えだけでは対処しきれないため、ウレタン防水層を新しい物に替えるという防水工事になります。
8. トップコート塗り替えの施工単価
防水層 | 1㎡あたりの平均施工価格 |
ウレタン防水 | 1,500~1,850円 |
FRP防水 | 1,800~2,500円 |
ゴムシート | 900~1,500円 |
※選ぶトップコートの種類によって金額が変わります。
9.トップコート塗り替えに最適な業者とは
トップコート塗り替えはどこに頼めばいいのでしょうか。
「塗る」という作業から塗装業者を連想した方のために、ここで防水業者と塗装業者の違いを説明します。
違いは明確で、防水業者は水を防ぐために塗装し、塗装業者は部材保護のために塗装をするのです。
同じ「塗装」という作業でも目的が異なれば、方法も異なります。
塗装業者の中には、防水知識が無いにもかかわらず、防水層のトップコートの塗り替えを引き受けてしまうという事があります。
塗装業者は塗りのプロです。見た目はキレイに仕上げてくれるでしょう。
ですが、必ずしも防水機能を備えているとは限りません。
防水目的ならば、防水の専門業者に相談するべきです。
また、トップコートの塗り替えを業者に相談した時にはすでに防水層まで劣化症状が進んでしまっているという事例は数多くあります。
なぜなら、劣化症状が出始めてきてから業者に頼むまでに時間を空ける方がほとんどだからです。
そろそろまずいなと思って業者に相談した時には劣化が広がってしまっていて、結局大がかりな防水工事をする事になります。
劣化のサインが出たら、すぐに業者に相談しましょう。
どのような工事方法が適しているのか、費用はいくら位かかるのかなどを知るためにも複数の業者から話を聞き、見積もりを取る事をおすすめします。
まとめ
防水工事のトップコートについてと、トップコート塗り替えについてまとめましたが参考になったでしょうか。
トップコートの塗り替えで済むのか判断が難しい場合は、まずは私たちにご相談ください。
トラブルなく防水工事を成功させるなら
防水工事は、修繕規模によっては何百万円もの費用がかかります。
だからこそ、依頼をする業者は慎重に選ぶべきです。
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